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フィルターベントに隠れて耐圧強化ベント? [AM-ベント、排熱]

新潟県・原発に安全管理に関する技術委員会で、東京電力は耐圧強化ベント、3.11東電核災害で満足にできなかったベントをフィルターベントの代替手段でやる手順だと云っています。

米国生まれの耐圧強化ベント
 1986年チェルノブイリ事故で格納容器の性能、特にBWR Mark 1格納容器がクローズアップ。Mark1格納容器の体積が他の格納容器に比べて小さいということから、NRC米国原子力規制委員会はMark1に対して格納容器性能改善を要求する。格納容器からの除熱に失敗するTW事故シーケンスでは炉心損傷(メルトダウン)前に、格納容器サプレッションプールS/Cから蒸気をベントすれば格納容器の過圧破損を防ぎ、それによって炉心損傷の防止に効果がある。既存のAC系(格納容器に窒素を充填する不活性ガス系)やSGTS(非常用ガス処理系)を用いたダクトベントでは、運転員が配管類の過圧破損を恐れて操作をためらうことがあり得る。これを防止するために高圧力対策を施したS/Cを通する「耐圧強化ベント」の設置を例示している。
 NRCはMark1格納容器プラントに耐圧強化ベント系を事業者が自主的判断で付けるよう、付けないならその理由を明らかにしNRCの承認を得るよう求めた。

 NRCのシビアアクシデント研究NUREG-1150から格納容器からのベントだけでは、どの事故シーケンスでも過温による格納容器破損が生じる。しかし改良型自動減圧系ADS、バックアップスプレイ、バックアップ圧力容器注水などの対策、これらすべてを格納容器ベントと組み合わせて採用した場合には大きなリスク低減効果が期待できると考えられた。ベントと代替注水(それによる崩壊熱除去 Decay Heat Removal:DHR)が行われない場合は、格納容器からの除熱に失敗するTW事故シーケンスの炉心溶融確率が増え全体の炉心溶融確率が約2.6倍に高まる。
 ADS、バックアップスプレイ、バックアップ圧力容器注水などの対策や崩壊熱除去:DHRの問題は個々の炉(原発)で異なるなどの理由からNRCは個別に審査、個別プラント評価(IPE Individual Plant Examination(個別プラントの体系的安全解析)計画で扱うとにした。NRCは先ず「耐圧強化ベント」の設置を求めた。

日本の物まね耐圧強化ベント

耐圧強化ベント設備イメージ.jpg

日本もこれに倣って導入した。平成24年2月24日(月)の原子力安全委員会 原子力安全基準・指針専門部会
第13回 安全設計審査指針等検討小委員会の資料と議事録から要約抜粋する。
http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/senmon/shidai/anzen_sekkei.htm

 山中康慎氏(電気事業連合会/東京電力からの出向者?)が解説している。
 それでは電事連から耐圧強化ベントについてという資料でご説明させていただきます。全てのBWRに共通なもの、平成6年ぐらいのアクシデントマネジメントの整備ということで追設をしたもののお話をということで調べていたのですが、全て確認することができなかったものですから、東京電力で確認できた範囲ということで今日はご説明させていただきたいと思っております。

1枚捲っていただきまして、格納容器ベントの概要ということでございます。図の方は見ていただきますと分かりますとおりでございまして、追設のベント配管、SGTSのラインの途中から追設のベント配管を使って排気筒まで経由して放出するというラインでございます。

この要求の流量でございますが、崩壊熱の1%に相当する蒸気を排出できることということで、この基本条件が格納容器圧力が最高使用圧力において基本流量以上を確保できることということになってございます。
概ね後ほど一番最後のページでお示ししますが、福島第一の3号機、BWR-4のプラントで大体35t/hぐらいということになります。

それでは、このベント管の圧損評価がどうなっているのか。つまりきちんと排出できるのかといったことについて3ページ目の資料でご説明をさせていただきます。格納容器から排気筒までのベントパスに要求流量を流した時の配管等での圧力損失を評価をし、圧力損失の大きさがベント開始時の格納容器圧力、つまりその時は格納容器最高使用圧力よりも高いところで運用されておりますが、ここは最高使用圧力より小さくなることを確認してございます。評価は配管を通過するガスの圧力低下に伴う比重量の減少等を考慮し、区間を、配管の直線部分だとかエルボーだとか、結構細かく区切ってやったりしておりますが、そういうところを考慮して計算をしてございます。

イメージ的にはその次、1枚捲っていただいて5ページ目のようなイメージになります。既設の配管、追設のベント配管、既設のSGTS(非常用ガス処理系)の配管から排気筒の内管。ここでは四つぐらいに示してございますが、一番最後の6ページ目の図を見ていただきますと、1F-3の例では、ここをもう少し細かく区切って9区間ぐらいに分けて計算をしているということになってございます。
圧力がちょっとずつ下がっていく。圧損で下がっていくのですが、最後の放出点のところで大気圧以上であるということであれば放出ができる、このような圧評価を実施してございます。

結果1F-3.jpg


4ページ目はこの圧損評価で用いる計算式でございまして、ダルシー・ワイズバッハの式という、この円管の直管部を流れる時の圧損を表す式を用いて計算をしてございます。
 6ページ目に詳細な結果を示してございますが、格納容器の出口の方ですね。区間の一番最初の部分、ここで最高主要圧力である4.35となっています。そこから出ていく時の配管の外径が450㎜、45㎝です。配管、継手の項と摩擦係数、比容積、流速と圧損を計算しますと、この圧損ΔPが出てまいりしまて、この区間で0.02。ですので、この区間の末端の圧力が4.32ということになりまして、それが次の区間2の入力ということになります。これを9区間に分けて計算をいたしまして、最終的に排気筒の出口のところで3.8㎏/㎝2 absということで大気圧1.03㎏/㎝2 absよりも高いということになりますので、排出ができると。

このようなそれぞれのプラントに実施をいたしまして、この耐圧強化ベントを使って原子炉の減圧と除熱ができるというような評価を実施しているのが、我々が導入しております耐圧強化ベントということでございます。私からのご説明は以上でございます。(議事録より)

アーリーベント
格納容器の設計最高使用圧力よりも小さい、約1気圧低い圧力でもベント出来ることを確認してある。東京電力は「ベントについては,当社としても米国[設計最高使用圧力以下で行う]と同様アーリーベント(低い圧力でのベント)を実施する手順を整備しており」と新潟県:安全管理に関する技術委員会に説明している。その手順は、こうした試算に基づいて整備さているのだろう。その裏付けが有ったればこそ、3.11の夜半には官邸対策本部では炉心損傷後に設計圧力Pdに達したらベントする方針を採ったのであろう。それを示唆する文書が22時付、24時付である。
参照・・http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2014-10-08-3
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2015-05-18

福島第一の現実は甘くなかった
2015年5月20日なって3.11東電核災害時の2号機でベントは出来なかったらしいと発表された。残留放射能福島ベント失敗.jpgによる放射線らしき線量が配管から検出されない。どのようなメカニズム、故障・損傷によるものか、その解明に東電は関心が無いようである。
 原因が東電の云うAO弁(空気操作弁)の作動用の圧搾空気がなかった、MO弁(電動駆動弁)の電気がなかったという東電核災害で実際に直面した問題だとすると、空気圧縮機を持ち込んだ、バッテリーをかき集めたという対策を採ったうえでベント操作をしているのだ。それでもなお失敗したかもしれないのだ。
 新たに、予め窒素ガスボンベ、バッテリーを用意することにしたのだ。原因が分からなければ、それで十分なのか、確認できない。作動用空気を送る配管の耐震性はCランク、一番低い耐震背が弱い配管で地震で損傷した可能性が指摘されている。そうなら幾ら窒素ガスボンベから作動用ガスを送っても、途中で漏れて役に立たないと考えられる。AO弁(空気操作弁)が開かなければ、フィルターベントも出来ない。東電核災害の解明が終えない限り、役立つ対策は出来ない。


タグ:ベント

アーリーベント [AM-ベント、排熱]

 米国のアーリーベント

発災から約1年半後、2012年8月に米国原子力発電協会(INPO)は「福島第一事故からの教訓」という特別報告を公表している。
和訳・・ http://www.gengikyo.jp/report/tohoku_F1jiko_INPO_report.html
原文・・ http://www.wano.info/Documents/Lessons%20Learned.pdf

その和訳の15、16頁で
「日本の BWR では、米サンディア国立研究所で実施された格納容器の健全性試験の結果の検討により、ベント実施前に格納容器圧力が設計圧の2倍に達することを許すような手順ガイダンスが決められた(NUREG/CR-6906/SAND2006-2274 [2006 年7 月発行]を参照)。」
「燃料損傷が発生した場合、アクシデントマネジメントガイドでは、原子炉格納容器(PCV)の最高運転圧力の2 倍に達すると予測され、格納容器スプレイの復旧が見込めず、注水量がトーラスベントラインに及んでいない場合には、ベントが許されるということが記載されている。格納容器のベントには発電所長の許可が必要である。」
「ベントを遅らせる戦略を採用することが決定された際、格納容器圧力が高い状況下での水素漏洩量の増加の可能性については十分に対処されなかった。」

「概して、日本の電力会社が 1980 年代以来用いている原子炉格納容器(PCV)のベント計画は、放射性物質の放出を避けるため、できるだけベントを遅らせるよう考えられている。この戦略に沿って、ベントラインには、格納容器圧力が最高運転圧力に達するまで破裂しないように設計されているラプチャーディスクが備えられている。」

「比較として、米国の BWR は、一般的に早期ベントを妨げるラプチャーディスクは備えておらず、非常時の運転手順では格納容器の設計圧力に到達する前にベントを開始することが要求されている。燃料損傷が起こった場合には、手順書ガイダンスにのっとり、PCV 内での爆発の可能性を減らすため、格納容器内の水素濃度に基づき早期ベントが要求されている。サイトERC(発電所対策本部) と相談し助言をもらった上で、当直長によってベント開始が決定される。」

Enformable-BWROG-Recommendation-5-input-rev-12-14-2011_Page_01-150x112.jpg28頁には
「1980 年代以降、日本の事業者及びベンダーが米BWR-OG(Owners Group )で作成されたアクシデントマネジメント戦略から外れる意思決定を行った。この決定は、技術的解析結果や異なる戦略の関連リスクに対する異なる見方に基づいている。たとえば、燃料損傷が起こった場合、原子炉格納容器圧力が最高運転値の2倍になると予想されない限りベントを実施しないというように日本の格納容器ベントに対するアプローチは、米BWR-OG ガイダンスとは異なっている。
この早期ベントに関する米BWR-OG の戦略からの逸脱は、希ガスを含む放射性物質を早期に放出することを防止するためになされた。」

「手順では、爆発の可能性を減ずるために水素ガス制御に可燃性ガス制御系の運転を実施することになっているが、この系統は電源がなかったので運転できなかった。EOP でもAM ガイドでも水素制御のためのPCV ベントといった他のアプローチは含まれていなかった。他の国々のBWR で使っている手順では、低い格納容器圧力で格納容器の水素を大気へベントすることができる。
ベントを遅らせることは、PCV における水素爆発の可能性を大きくすることに加え、(例えば、高圧で漏洩しやすいドライウェルのガスケットなどを通って)原子炉建屋への水素漏洩量を増加させ、炉心に注入できる低圧注水量を減らすとともに、大気への崩壊熱放出を減少・遅延させ、大きな漏えいを伴う原子炉格納容器の損傷の可能性を増加させる。」

この報告を承けて「ベントによる放射性物質の放出を嫌った日本の社会事情に合わせて運用しようとした。その点に根源的な誤りがあったとも受け取れる。」という方、日本経済新聞編集委員の滝順一氏のような方がいた。http://www.nikkei.com/article/DGXNZO46247170Y2A910C1000000/?df=3

2015年6月追記
米国NRCが2013年6月出した命令EA-13-109を読むと、米国でも「沸騰水型原子炉(BWR)は、信頼性の高いシビアアクシデント時に運用可能な強化格納容器ベントシステム(HCVS)を備えていなければならない。」と命令し、ウェットウェルベントは遅くとも2018年6月30日、ドライウェルベントは2019年6月30日までの実行を求めている。

米国NRCの信頼性の高い強化ベント改訂命令について 
http://www.nsr.go.jp/data/000048381.pdf

BWROG Companion Document
http://www.nei.org/corporatesite/media/filefolder/conferences/bwrv/archives/vent-workshop-ii.ppt

東京電力のアーリーベント (低い圧力でのベント)

しかし、格納容器の設計圧力に到達する前の早期ベント手順を事故前から東京電力は整備していた。東電は新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会に次のように答えている。
「ベントについては,当社としても米国と同様アーリーベント(低い圧力でのベント)を実施する手順を整備しており,格納容器圧力が圧力開放板の設定圧力に到達したタイミングでベントする仕様としておりました。しかし,福島事故で経験したようにベントのタイミングについてはプラントの状況にあわせて柔軟にコントロールできるような設備であるべきであったと考えます。」
(圧力開放板とは、ラプチャーディスク・破裂弁のこと。福島事故検証課題別ディスカッションの6シビアアクシデント対策
http://www.pref.niigata.lg.jp/genshiryoku/1356771524701.html

この手順、発災時アーリーベントの東電手順が米国の様に『燃料損傷が起こった場合には、PCV 内での水素爆発の可能性を減らすため、』ベントするものなのだろうか。東電のアーリーベントはメルトダウン、メルトスルーの時でも行うような手順なのだろうか。

スイスのアーリーベント系設備

下図は2011年12月27日の第5回東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見に関する意見聴取会での資料である。奈良林 直 北海道大学 教授は、このスイスの原発を次のように説明している。
「ベント系の周到な準備がされているんです。東電さんのプラント、我が国のプラントは停電すると先ほどのSGTSのバルブをたくさん操作しなければいけないんですが、こちらは系統図にございますように、バルブを1つ操作すればいいんです。更にラプチャーディスクが今回割れなかったわけですけれども、なかなか割れなくてやきもきする状況でしたが、その場合にはラプチャーディスクと並列にバルブが入っていて、もっとラプチャーディスクが割れる前でもベントができる。つまりアーリーベントができるという構造になっています。」
「この系統、配管は放射性物質を含んだ気体が来てしまいますので線量が上がってしまいます。上の写真のとおり、バルブとラプチャーディスクの配管のところなんですけれども、四角い箱みたいなものがずっと伸びていますが、これは実はバタフライ弁の駆動軸につながっていまして」「バルブを本当に手で、このハンドルを開けなさいということで、勿論電気があれば遠隔操作で電気があるんですが、こういうベントしなければいけないというのは大体SBOのときですね。だから、そこまで考えてベントの機能が設けられています。」

 sankou5-3-11b.jpg


柏崎刈羽原発では、次のように変えたと東電は公表している。
全体のベントのシステムは、耐圧強化ベント系とフィルター系の2系列。耐圧は米国と同じく破裂弁ラプチャーデスクを除いた。フィルター系、スイスはヨウ素ガスを捕集し、放出率を100分に一以下にする薬液があるが、東電にはない。

131031_sa01_vento,2.jpg
バルブも遠隔から手動で開閉できるようにしてある。
131031_sa01_vento,2-9.jpg
131031_sa01_vento,2-11.jpg
つまり、ベント系は早期ベント、アーリーベントが可能。それも核燃料が損傷、溶融メルトダウン、溶
融貫通メルトスルーしても可能になっている。

パッシブ passive な注水手段がない東京電力の対策 水素ガスとベント 試論⑳ [AM-ベント、排熱]

極限ケースは新潟県の設定事故で消防車ポンプも使えない事にして溶融炉心でRPV原子炉圧力容器が損傷した時、その直後位の時にベントする。参考ケースはベントもしないで置くという設定である。
 新潟県が設定した発災時の条件は、従来のシビアアクシデント研究でTQUVと略号がある設定、過渡事象(T )と給水喪失(Q)と高圧注水系喪失(U)と低圧注水系喪失(V)が組み合わさった設定を基本に、SBO全交流電源喪失で、対応策にECCS非常用炉心冷却装置といった設計段階から設けられている対策設備とガスタービン発電機(DEC対策設備)及びMUWC復水補給系の復水移送ポンプ、FP消火系の電動ポンプ、ディーゼルポンプが使えないという東電核災害時に類似した条件を設定している。さらに、3.11の11日夜から12日未明の状態、消防車ポンプも使えないという条件を追加したケースが極限ケースと参照ケース。

極限ケースは「福島第一と同様の状態」と新潟県はいうが、溶融炉心落下の様相は福島第一3号機である。落下の様相は大きく2種類とされている。一つは、「炉圧高圧状態でRPV原子炉破損、ペデスタル床などに溶融炉心が飛散」するHPME high pressure melt ejection (ejection は放出、噴出)のパターン。1号機で起きた可能性がある。もう一つは「炉圧が低圧状態でRPV原子炉破損、ペデスタル床に溶融炉心が落下」のLPMR low pressure melt release (release は放つこと、投下)。3号機は3月13日02時半頃(地震発生後約36時間)に炉心は露出を始め、14日07時頃RPV損傷したと見られている。その間のRPV原子炉圧力は実測で0.5MPa(a・絶対圧)以下である。3号機は「ペデスタル床に溶融炉心が落下」のLPMRである。TQUVという事故シナリオでは、減圧に成功するのでLPMRになる。

デブリの冷却
 
 

image4_w3.jpg落下した溶融炉心デブリは、県事故シナリオではペデスタルに注水蓄水の水の中に落ち冷却されるが、極限ケース、参考ケースには蓄水はない。東電核災害では3号機は12日の朝07時40分頃から東京本社の指示で止められるまで約1~1.5時間、PCVのD/Wスプレイが行われた。これが手順書の水量、1時間当り120m³であれば、ペデスタルには十分な量が溜まっている。2号機はスプレイはされていないが、東電は再循環ポンプのモーター軸受のシール水が漏れて3日間でかなりの量溜まっていたと評価している。1号機は、PCVスプレイはなかったし、シール水が溜まるほどの時間がない時刻にメルトスルーしている。極限ケース、参考ケースはペデスタルに蓄水がない福島第一1号機と同様の状態である。
 極限ケース、参考ケースではペデスタルの蓄水の蒸発でデブリ冷却はない。床面への熱の拡散での冷却効果があるが、落下量が増えるとデブリ温度が上がり、床の鋼板を熔かしその下のコンクリートと化学反応を始める。この反応をコア・コンクリート反応、MCCI、CCIという。この落下した直後でCCIが始まる前での時点でのベント実行を設定している事故シナリオが極限ケース。ベントをしない、出来ないケースが参考ケース。このベントの点では1号機もそうであった。

参考ケースのベント

参考ケースのベントに東電事故シナリオでの1.9時間時刻でのベントが一番似ている。東電事故シナリオでは発災から1~2時間はPCV格納容器のD/W温度が200℃以上になると東電は解析している。しかし、東電は理由不明なままベントを実行しないとしている。東電のベント実行条件「格納容器の最高使用圧力の2倍、温度としては200℃」に従って、本来なら行われるベント。
 この東電事故シナリオとの違いは、PCVのD/Wに溶融炉心デブリのストロンチウム、プルトニウムといった気化温度が高い難揮発性の放射能の微粒子があること。RPV原子炉圧力容器内ではこれらは一旦気化してガス化しても炉心を離れ熱を失うと凝縮し微粒子となり炉心周辺を漂っていて、RPV原子炉圧力容器の中で沈着などするのでPCV流出量は極めて少ない。それが溶融炉心ごとPCVにあるから、ベントで耐圧強化ベントではD/W気相部⇒S/Cプール⇒排気塔・高さ約100m、フィルタベントではD/W気相部⇒S/Cプール⇒フィルタ装置⇒建屋煙突・高さ約60mと出ていく。
 炉の減圧操作でメルトスルーまでの炉の水蒸気などはS/Cプールに一旦出されている。熱、セシウムなどの放射性微粒子はプール水に捕えられている。セシウムなどは2度目の捕獲(スクラビング効果)をうける。希ガスは、発災直後は5×10E+19ベクレルで2時間後は1×10E+19位、6時間後は8×10E+18である。プール水量は発災から約8時間分の崩壊熱を全部吸熱しても約80℃になる水量で設計してある。6時間後のベントではS/Cプールで熱を吸収し得る。減圧沸騰は起きない。

ABWR水素ガスAMなし01.jpg 水素ガスは、どうか。東電はベント前に「格納容器内に蓄積されていたものについてベント後1時間で全量放出」を仮定している。1時間の間に床の鋼板を熔かしその下のコンクリートと化学反応MCCIが始まる。それでは、水素ガスが大量に発生する。そのMCCIで発生する水素ガスの一部は、ベントで格納容器PCVから出る。しかしPCV内をみたす。

 参考ケースのベントで、PCVの過圧状態は避けられる。しかし高温ガスの一部はベントでPCV外に排出されるが高温化は進む。東電のフィルタ装置は、中のスクラバ水で熱を吸収する構造。それで温度が上がった水をS/Cプールに落水する。熱エネルギーは戻ってくる。過温は避けられない。従って、PCV過温破損に至る。東電はベントをしない、出来ない参考ケースでは2時間後、発災から8時間後の時刻でPCV過温破損すると評価している。極限ケースはベントで熱が部分的には排熱されているから、時刻は8時間後より遅くなるだろうが、PCV過温破損に至る。「フィルター付ベント設備単独では過圧破損が回避できるのみで、過温破損にはほとんど効果がない。」事は20年以上も前から知られている。2013年公表のNRC米国原子力委員会のSOARCA研究では、過温破損後に水素爆発が起きると評価している。

コア・コンクリート反応MCCIによる底抜け
 PCV過温破損しても原子炉建屋で水素爆発が起きてもコンクリートと化学反応MCCIは止まらない。デブリはコンクリート床を熔かし、ペデスタル壁を熔かし続ける。

原子力安全基盤機構JNESの平成21年度地震時レベル2PSAの解析(BWR)では4. 格納容器シェルメルトスル解析」でMCCIを解析している。
http://www.nsr.go.jp/archive/jnes/atom-lib/docs/article/index/id/954/art/1

この研究を参照にすると約5.5時間(330分)後に全量落下する極限ケース、参考ケースでは、浸食深さ20㎝は約80分後の時刻6.9時、浸食深さ40㎝は約120分後の時刻8.9時、浸食深さ60㎝は約195分後の時刻12.1時、そして時刻16.1時頃に深さ80cmまで浸食が進む。水平、横方向は66分後の時刻6.6時に20㎝の広がり、さらに106分後の時刻8.4時に40cm、さらに60cmには180分後の時刻11.4時。

柏崎刈羽原発6、7号機には東京電力の資料ではペデスタルの壁近くにドレンサンプピット(集水桝)がある。柏崎刈羽原発6、7号機のピットの寸法が同じだとすると、ピットの底からPCV格納容器の底までは約40cmの鉄筋コンクリートがあるだけである。東電核災害では、このピットにデブリが汚水・ドレンと同様に流れ込み堆積し、MCCIが起きている。極限ケース、参考ケースでは、約5.5時間(330分)後にデブリ全量が落下してから約200分後、時刻で時刻8.9時にMCCIでデブリがPCV格納容器の底を破る。

つまり、格納容器は上は過温破損で放射能、水素ガスを放出し、下はMCCIで破れてデブリが地下環境に出ている。ベントは、上部のD/Wの過圧破損を回避できるだけである。回避ための放射能放出を含んだ高圧ガスを出す操作がベントだ。ベントフィルタは、フィルターで粒子状の放射能の一部、大半を捕らえる。

 パッシブ passive な注水手段がない

過温破損を防止するためには、デブリ・溶融炉心を冷却し、格納容器内温度を下げる必要がある。デブリの冷却はMCCIコア・コンクリート反応を抑制する効果もある。格納容器内に注水することが現在採られている策である。「過温破損を防ぐための対策というのはこれはスプレイです。要は外部から注水をしてそれによって温度を下げるという対策になります。」(東京電力:川村原子力設備管理部長)
 東京電力の注水策は、電力ポンプやDGポンプなどアクティブ active な手段しかない。だから、そうしたアクテッブな手段が一切使えないという新潟県の事故設定を東電は「県の事故シナリオは検討に値しない。フィルターベント設備の評価の際に使う事故シナリオではない」と言って排除しようとしている。
 県の事故設定は東電核災害の3月11日の状況である。つまり現実にあった状況である。東電の現在の対策では、アクテッブな手段が一切使えない東電核災害の3月11日の状況が9時間程度続くと、PCV Primary containment vessel 第一の放射能封じ込め容器がまず過温破損し、MCCIコア・コンクリート反応でデブリが地下環境に出てくる。この東電核災害で露呈した不完全さ、放射能封じ込めができないことを隠蔽しようとして、技術的にあり得ないなどといっている。
 電力ポンプやDGポンプなどアクティブ active でない手段、パッシブ passive な注水手段は、ある。1997年、柏崎刈羽7号機ABWRが営業運転を開始した年にNRC・米国原子力規制委員会のお墨付き・標準設計認証を得たUS-ABWR・米国版ABWRには付いている。東芝がフィンランドなどに売り込んでいるEU-ABWRにも付いている。LDF・PF「下部ドライウエル受動的注水」という設備である。
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2014-04-16

EU-ABWRには東芝が開発したコアキャチャーも付いている。
こうした対策を先ず後付けしてからベントフィルターの有効性を考える必要がある。


ベント時の汚染水ミスト 水素ガスとベント 試論⑲ [AM-ベント、排熱]

試論⑱の続き

ベントの際の汚染水ミストで環境へ放出を減らすには

ベントで、減圧沸騰で生成した汚染ミスト、フィルター装置で吹き上がりでできる汚染ミストはどれ位の水量が環境に出ていって、それでストロンチウム、プルトニウム、セシウムはどれ位のベクレル出ていくのだろうか。

 これを少なくするには、PCVの炉圧を下げてベントを行い減圧の程度を小さくすることである。NRC米国原子力委員会のSOARCA研究では、設計気圧でベントを行っている。JNES研究は炉圧が設計気圧の1.5倍でPCVスプレイを行い、炉圧が設計気圧程度0.49MPa(a)で止めるAMになっている。これを設計気圧でスプレイを開始するようにする。PCV内に水素ガスと希ガスがある。この二つのガスは温度を下げても凝縮しない。水蒸気の様に体積が著しく減少して減圧効果が顕れない。だから、炉圧が下がる限界がある。その程度まで下がったらスプレイをやめるといったAMが考えられる。設計気圧とその2倍では、PCV内の水と水蒸気が持てる熱量(沸点温度や気化熱)が小さくなるから、設計気圧でのベントは時刻が早くなる。

(PCVに注水する量は、格納容器ベントラインの水没水位をクリティカル条件とする制限がある。それだけの量を注水した場合、設定圧力の2Pdでベント実行する時刻は場合は「事象発生後約40時間後」と東電はしている。沸点温度や気化熱などを考えると10時間ほど早くなると思う。)

 この設計圧力ベントAMは放出放射能の増減にはどのように影響するか。ベント時刻が早くなることで希ガスは減衰量が小さくなるので、放出放射能による放射線量は増える。ヨウ素は、ヨウ化セシウムがγ線を被曝して起きる化学変化で無機ヨウ素(ガス)と有機ヨウ素(ガス)が生じる。時刻が早くなるから被曝γ線量が小さくなり、生成量が減る。セシウム、ストロンチウム、プルトニウムなど微粒子状の放射能は、それを含んだ汚染ミストの生成量ひいては環境への放出量が減る。
 希ガスはプルーム通過時の被曝線量の大半を占める。しかし、残留できない。セシウムなど微粒子状の放射能は、通過時の被曝線量では極めて小さい。地面に沈着して長期間に被曝をもたらす。短期の大量被曝か長期の被曝をもたらす環境汚染の大規模化かの二者択一選択を迫られる。風向きによる拡散予測や避難の進展具合などを様々な要因を考慮した一義的には決められない選択、まさに政治的決断が求められる。

140827 No.2-2 (放出量)県2.jpg

ベント以外の排熱の手段があれば

 ベント以外の排熱の仕組みがあれば、こんな悩ましい選択はしなくて済む。ABWR用には東芝がフィンランドに売り込んだEU-ABWRの設計にあるCCCSや日立がアルバニアに売り込んでいる設計のABWR(次世代型で開発している HP-ABWR High Per- formance−Advanced Boiling Water. Reactor の設計をベースにしているABWR)にあるPCCS・受動的静的格納容器冷却系がある。これらは72時間、少なくとも3日間は崩壊熱を排熱できる。Hx熱交換器の入っている水タンクに蒸発排熱用の水を給水すればもっと可能だ。これが後付でもよいから付いていれば、崩壊熱の蓄積での過圧、過温からベントをする必要がなくなる。時刻で迫られた選択ではなく、選択に適した時刻を選べる。
 加圧する非凝縮性ガスのうち主なものは窒素ガス、水素ガスと希ガス。希ガスは崩壊でなくなって行く。CCCSが設置されているEU-ABWRの設計、この設計でのフィルタ装置に対してフィンランド規制当局STUKは「これは非凝縮性ガスの長期管理のためにプラントに設置される。A filtered containment venting system will be installed at the plant for long-term management of noncondensable gases.」とコメントしている。東京電力は6号機の原子炉系をつくった東芝、7号機の日立と後付できないか、検討すべきだ。

(STUKのコメントは 4.5.2009  PRELIMINARY SAFETY ASSESSMENT ON OLKILUOTO 4 NUCLEAR POWER PLANT PROJECT  APPENDIX 1 の12/89
http://www.stuk.fi/ydinturvallisuus/ydinvoimalaitosten-toiminta/uudet_laitosyksikot/en_GB/uudet_laitosyksikot/_files/81884695828889910/default/stuk_preliminary_safety_assessmen_tvo_ol4_appendix1.pdf )

 東芝のEU-ABWR
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 日立
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ストロンチウムなどの環境拡散 水素ガスとベント 試論⑱ [AM-ベント、排熱]

ストロンチウム、プルトニウムがRPV外へ
新潟県が設定した発災の条件では、約8時間後にRPVが破損し、溶融燃料がペデスタル(下部D/W)に全量落下する。落下前は溶融燃料のストロンチウム、プルトニウムといった気化温度が高い難揮発性の放射能は一旦気化してガス化しても炉心を離れ熱を失うと凝縮し微粒子となり炉心周辺を漂っていて、RPV原子炉圧力容器の中で沈着などするので流出量は極めて少ない。メルトスルーでPCV格納容器に出てくる。ペデスタル(下部D/W)に出てくる。県の設定事故シナリオではペデスタルに4時間前から溜められた水の中にデブリとなっている。封じ込めているのはPCV格納容器だけである。

ベントの際の汚染水ミストで環境へ

この難揮発性放射能を新たに加えたPCV内の水、汚染水が、ベント時に減圧沸騰する。耐圧強化ベントでは1気圧まで、フィルターベントではフィルターの抵抗を破る圧力α+1気圧まで減圧される。水温が高ければ減圧沸騰が起こり、その際に微小な水滴ミストが発生する。エントレインメント(微細な水滴)が生じる。その発生率をは耐圧強化ベントで1気圧まで下がる場合での研究がある。研究によれば373K(100℃)を超えると発生を始め、436K(約163℃)の0.12までの範囲でおおよそ比例直線的(線形)に増加する。この汚染ミスト(エントレインメント、微細な水滴)にはストロンチウム、プルトニウムといった難揮発性の放射能やセシウム、ヨウ素など揮発性放射能が含まれている。発生率0.01、1%の汚染ミストには1%のそれら放射能が含まれる。
フィルタベント設備02水位.jpg PCV内の水、汚染水の量は、S/Cプールの平時からの水量・約3600m³に総注水量(1700m³以上可能)を加えた量である。発生率0.01、1%でも約50m³の汚染ミストである。耐圧強化ベントでは、汚染ミストはそのままで出ていく。ベント配管中に付着し詰まらせる分を除いて、そのまま環境中に出ていく。フィルターベントではフィルターベント装置に到達する。この装置の汚染ミストの捕獲率は不明だ。捕獲された汚染ミストは、フィルター性能の低下や停止、新たな汚染ミスト生成を招く。
 フィルタ装置は直径:約4m 高さ:約8mで中心を直径0.4mのベントガス通過管が通っている。だから約12トン(12㎥)の水が入ると水面が約1m上昇する。東電は、金属フィルターが水に包まれ濡れて、放射能エアロゾルの捕捉力が低下することを懸念している。ベントガス噴出による水の吹き上がりなどを考慮して通常の水位1.0から1.5m上方の2.5mを上限水位としている。だから、汚染ミストや凝縮した水蒸気の復水で約20トン弱溜まると上限水位に達する。約50トンなら金属フィルターの下端に水面が達する。上限水位を超えたら噴出するベントガスで汚染水が吹き上がり、新たな汚染ミストができて環境に出ていく。東電は上限水位に達したら、止めてフィルタ装置の汚染水を格納容器内のS/Cに入れ、新たな水をフィルタに張るとしている。
(東京電力、平成26年2月11日、「フィルタベント装置の除去性能の整理」の8Pの実機挙動評価の評価図、
http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/383/744/140211_4-1,0.pdf

柏崎刈羽原発6、7号機のベント実行の設定圧力の2Pdでの沸点は168.3℃(約441k)だから12%約600m³、設計圧力0.411MPa(a)では145.6℃(約418k)で9%約450m³の汚染ミストができる。その分の放射能が出ていく。研究では、約2時間で減圧を終え、生成も終えるとなっている。フィルターベントでは減圧が1+α気圧までだから、この1気圧より総生成量は少ないだろうが、ベントを始めたら直ぐに約20トン、上限水位に水面を押し上げる量できる。東電は初回のベントは「格納容器内に蓄積されていたものについてベント後1時間で全量放出を仮定」しているが、全量放出する間にフィルタ装置の汚染水の排水と水張を何回するのだろうか。
 そのベントで、減圧沸騰で生成した汚染ミスト、フィルター装置で吹き上がりでできる汚染ミストはどれ位の水量が環境に出ていって、それでストロンチウム、プルトニウム、セシウムはどれ位のベクレル出ていくのだろうか。

 これを少なくするには、……試論⑲に続く

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