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パッシブ passive な注水手段がない東京電力の対策 水素ガスとベント 試論⑳ [AM-ベント、排熱]

極限ケースは新潟県の設定事故で消防車ポンプも使えない事にして溶融炉心でRPV原子炉圧力容器が損傷した時、その直後位の時にベントする。参考ケースはベントもしないで置くという設定である。
 新潟県が設定した発災時の条件は、従来のシビアアクシデント研究でTQUVと略号がある設定、過渡事象(T )と給水喪失(Q)と高圧注水系喪失(U)と低圧注水系喪失(V)が組み合わさった設定を基本に、SBO全交流電源喪失で、対応策にECCS非常用炉心冷却装置といった設計段階から設けられている対策設備とガスタービン発電機(DEC対策設備)及びMUWC復水補給系の復水移送ポンプ、FP消火系の電動ポンプ、ディーゼルポンプが使えないという東電核災害時に類似した条件を設定している。さらに、3.11の11日夜から12日未明の状態、消防車ポンプも使えないという条件を追加したケースが極限ケースと参照ケース。

極限ケースは「福島第一と同様の状態」と新潟県はいうが、溶融炉心落下の様相は福島第一3号機である。落下の様相は大きく2種類とされている。一つは、「炉圧高圧状態でRPV原子炉破損、ペデスタル床などに溶融炉心が飛散」するHPME high pressure melt ejection (ejection は放出、噴出)のパターン。1号機で起きた可能性がある。もう一つは「炉圧が低圧状態でRPV原子炉破損、ペデスタル床に溶融炉心が落下」のLPMR low pressure melt release (release は放つこと、投下)。3号機は3月13日02時半頃(地震発生後約36時間)に炉心は露出を始め、14日07時頃RPV損傷したと見られている。その間のRPV原子炉圧力は実測で0.5MPa(a・絶対圧)以下である。3号機は「ペデスタル床に溶融炉心が落下」のLPMRである。TQUVという事故シナリオでは、減圧に成功するのでLPMRになる。

デブリの冷却
 
 

image4_w3.jpg落下した溶融炉心デブリは、県事故シナリオではペデスタルに注水蓄水の水の中に落ち冷却されるが、極限ケース、参考ケースには蓄水はない。東電核災害では3号機は12日の朝07時40分頃から東京本社の指示で止められるまで約1~1.5時間、PCVのD/Wスプレイが行われた。これが手順書の水量、1時間当り120m³であれば、ペデスタルには十分な量が溜まっている。2号機はスプレイはされていないが、東電は再循環ポンプのモーター軸受のシール水が漏れて3日間でかなりの量溜まっていたと評価している。1号機は、PCVスプレイはなかったし、シール水が溜まるほどの時間がない時刻にメルトスルーしている。極限ケース、参考ケースはペデスタルに蓄水がない福島第一1号機と同様の状態である。
 極限ケース、参考ケースではペデスタルの蓄水の蒸発でデブリ冷却はない。床面への熱の拡散での冷却効果があるが、落下量が増えるとデブリ温度が上がり、床の鋼板を熔かしその下のコンクリートと化学反応を始める。この反応をコア・コンクリート反応、MCCI、CCIという。この落下した直後でCCIが始まる前での時点でのベント実行を設定している事故シナリオが極限ケース。ベントをしない、出来ないケースが参考ケース。このベントの点では1号機もそうであった。

参考ケースのベント

参考ケースのベントに東電事故シナリオでの1.9時間時刻でのベントが一番似ている。東電事故シナリオでは発災から1~2時間はPCV格納容器のD/W温度が200℃以上になると東電は解析している。しかし、東電は理由不明なままベントを実行しないとしている。東電のベント実行条件「格納容器の最高使用圧力の2倍、温度としては200℃」に従って、本来なら行われるベント。
 この東電事故シナリオとの違いは、PCVのD/Wに溶融炉心デブリのストロンチウム、プルトニウムといった気化温度が高い難揮発性の放射能の微粒子があること。RPV原子炉圧力容器内ではこれらは一旦気化してガス化しても炉心を離れ熱を失うと凝縮し微粒子となり炉心周辺を漂っていて、RPV原子炉圧力容器の中で沈着などするのでPCV流出量は極めて少ない。それが溶融炉心ごとPCVにあるから、ベントで耐圧強化ベントではD/W気相部⇒S/Cプール⇒排気塔・高さ約100m、フィルタベントではD/W気相部⇒S/Cプール⇒フィルタ装置⇒建屋煙突・高さ約60mと出ていく。
 炉の減圧操作でメルトスルーまでの炉の水蒸気などはS/Cプールに一旦出されている。熱、セシウムなどの放射性微粒子はプール水に捕えられている。セシウムなどは2度目の捕獲(スクラビング効果)をうける。希ガスは、発災直後は5×10E+19ベクレルで2時間後は1×10E+19位、6時間後は8×10E+18である。プール水量は発災から約8時間分の崩壊熱を全部吸熱しても約80℃になる水量で設計してある。6時間後のベントではS/Cプールで熱を吸収し得る。減圧沸騰は起きない。

ABWR水素ガスAMなし01.jpg 水素ガスは、どうか。東電はベント前に「格納容器内に蓄積されていたものについてベント後1時間で全量放出」を仮定している。1時間の間に床の鋼板を熔かしその下のコンクリートと化学反応MCCIが始まる。それでは、水素ガスが大量に発生する。そのMCCIで発生する水素ガスの一部は、ベントで格納容器PCVから出る。しかしPCV内をみたす。

 参考ケースのベントで、PCVの過圧状態は避けられる。しかし高温ガスの一部はベントでPCV外に排出されるが高温化は進む。東電のフィルタ装置は、中のスクラバ水で熱を吸収する構造。それで温度が上がった水をS/Cプールに落水する。熱エネルギーは戻ってくる。過温は避けられない。従って、PCV過温破損に至る。東電はベントをしない、出来ない参考ケースでは2時間後、発災から8時間後の時刻でPCV過温破損すると評価している。極限ケースはベントで熱が部分的には排熱されているから、時刻は8時間後より遅くなるだろうが、PCV過温破損に至る。「フィルター付ベント設備単独では過圧破損が回避できるのみで、過温破損にはほとんど効果がない。」事は20年以上も前から知られている。2013年公表のNRC米国原子力委員会のSOARCA研究では、過温破損後に水素爆発が起きると評価している。

コア・コンクリート反応MCCIによる底抜け
 PCV過温破損しても原子炉建屋で水素爆発が起きてもコンクリートと化学反応MCCIは止まらない。デブリはコンクリート床を熔かし、ペデスタル壁を熔かし続ける。

原子力安全基盤機構JNESの平成21年度地震時レベル2PSAの解析(BWR)では4. 格納容器シェルメルトスル解析」でMCCIを解析している。
http://www.nsr.go.jp/archive/jnes/atom-lib/docs/article/index/id/954/art/1

この研究を参照にすると約5.5時間(330分)後に全量落下する極限ケース、参考ケースでは、浸食深さ20㎝は約80分後の時刻6.9時、浸食深さ40㎝は約120分後の時刻8.9時、浸食深さ60㎝は約195分後の時刻12.1時、そして時刻16.1時頃に深さ80cmまで浸食が進む。水平、横方向は66分後の時刻6.6時に20㎝の広がり、さらに106分後の時刻8.4時に40cm、さらに60cmには180分後の時刻11.4時。

柏崎刈羽原発6、7号機には東京電力の資料ではペデスタルの壁近くにドレンサンプピット(集水桝)がある。柏崎刈羽原発6、7号機のピットの寸法が同じだとすると、ピットの底からPCV格納容器の底までは約40cmの鉄筋コンクリートがあるだけである。東電核災害では、このピットにデブリが汚水・ドレンと同様に流れ込み堆積し、MCCIが起きている。極限ケース、参考ケースでは、約5.5時間(330分)後にデブリ全量が落下してから約200分後、時刻で時刻8.9時にMCCIでデブリがPCV格納容器の底を破る。

つまり、格納容器は上は過温破損で放射能、水素ガスを放出し、下はMCCIで破れてデブリが地下環境に出ている。ベントは、上部のD/Wの過圧破損を回避できるだけである。回避ための放射能放出を含んだ高圧ガスを出す操作がベントだ。ベントフィルタは、フィルターで粒子状の放射能の一部、大半を捕らえる。

 パッシブ passive な注水手段がない

過温破損を防止するためには、デブリ・溶融炉心を冷却し、格納容器内温度を下げる必要がある。デブリの冷却はMCCIコア・コンクリート反応を抑制する効果もある。格納容器内に注水することが現在採られている策である。「過温破損を防ぐための対策というのはこれはスプレイです。要は外部から注水をしてそれによって温度を下げるという対策になります。」(東京電力:川村原子力設備管理部長)
 東京電力の注水策は、電力ポンプやDGポンプなどアクティブ active な手段しかない。だから、そうしたアクテッブな手段が一切使えないという新潟県の事故設定を東電は「県の事故シナリオは検討に値しない。フィルターベント設備の評価の際に使う事故シナリオではない」と言って排除しようとしている。
 県の事故設定は東電核災害の3月11日の状況である。つまり現実にあった状況である。東電の現在の対策では、アクテッブな手段が一切使えない東電核災害の3月11日の状況が9時間程度続くと、PCV Primary containment vessel 第一の放射能封じ込め容器がまず過温破損し、MCCIコア・コンクリート反応でデブリが地下環境に出てくる。この東電核災害で露呈した不完全さ、放射能封じ込めができないことを隠蔽しようとして、技術的にあり得ないなどといっている。
 電力ポンプやDGポンプなどアクティブ active でない手段、パッシブ passive な注水手段は、ある。1997年、柏崎刈羽7号機ABWRが営業運転を開始した年にNRC・米国原子力規制委員会のお墨付き・標準設計認証を得たUS-ABWR・米国版ABWRには付いている。東芝がフィンランドなどに売り込んでいるEU-ABWRにも付いている。LDF・PF「下部ドライウエル受動的注水」という設備である。
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2014-04-16

EU-ABWRには東芝が開発したコアキャチャーも付いている。
こうした対策を先ず後付けしてからベントフィルターの有効性を考える必要がある。


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